全国の農地に広がるリスクがある——「説明会」と呼ぶなら、まず「輸入しない」選択肢をテーブルに置くべきじゃないのか?

社会
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農林水産省は2026年8月28日、米国産生鮮ジャガイモの輸入解禁に向けたリスク評価の結果を公表した。米側との検疫措置協議が必要な病害虫として特定されたのは21種。9月18日にはオンラインで進捗説明会が開かれ、一般にも公開される。

だがこれは「説明会」と呼べる代物なのか。実態は、米国からの解禁要請を受けた検疫協議の進捗報告にすぎない。すでに病害虫21種を特定し、リスク管理措置の協議という次の工程に入っている。つまり議論の中心は「輸入するかどうか」ではなく、すでに「どう入れるか」に移っている。

21種のリストが示す危うさ

特定された21種には、次のような病害虫が含まれる。

ジャガイモシロシストセンチュウ(土中で長期間生存し、根絶が極めて困難)
ジャガイモシストセンチュウ
コロラドハムシ
コロンビアネコブセンチュウ
ウイルス・ウイロイド類(ジャガイモやせいもウイロイドなど)

このうちジャガイモシロシストセンチュウは、2015年に北海道網走市で国内初確認された。10年が経過した今も完全な根絶には至らず、生産者は作付け制限や消毒、機械の洗浄といった防除を続けている。国内の生産現場が総力で抑え込みにかかってなお制圧できていない相手を、生の状態で一般流通させようとしているのが今回の話だ。

家庭で消費者が皮つきのまま庭に植える、雨で土が流出する、農機のタイヤが土を運ぶ——流通経路が広がれば広がるほど、管理の目が行き届かない接触点が増える。しかも、これらの病害虫の宿主はナス科作物全般に及ぶ。ジャガイモ畑に限らず、同じ土壌でトマトやナスを育てる産地にも影響が波及しうる。北海道は国内生産量の約8割、種いも供給の中核を担っており、その産地が汚染されれば影響は全国に及ぶ構造にある。

「侵入は許さない」は防疫ではなく決意表明

鈴木憲和農相は8月28日の会見で、協議姿勢について「毅然とした姿勢で対応していく」と述べ、病害虫の侵入を許さないとの決意を強調した。9月4日の会見でも、説明会で寄せられた「輸入ありきで協議しているのではないか」との懸念に対し、「科学的にしっかりとした措置があってしかるべきだ」と応じている。

しかし線虫やハムシは、大臣の決意表明では止まらない。防疫とは制度と実務の設計であって、言葉の強さではない。北海道の鈴木直道知事は8月21日の会見で、病害虫の侵入防止と国内生産対策が講じられない限り輸入解禁は受け入れられないと明言し、JA全中も科学的根拠に基づく毅然とした対応を求めている。産地側の懸念は、感情論ではなく、10年かけても抑え込めていない現実の防除の困難さに根ざしている。

積み上がってきた経緯

生鮮ジャガイモの輸入は病害虫の国内侵入を防ぐため原則禁止されてきたが、2006年にポテトチップ加工用に限り米国産の輸入が解禁された。2020年、米国は一般流通用ジャガイモについても輸入解禁を要請し、農水省はWTO協定に基づく手続きを開始。今回の21種特定は、その手続きが最終段階に近づいたことを意味する。解禁までには複数年かかる見通しだが、説明会→正式リスト公表→検疫措置案の策定→有識者聴取→省令改正という手順は、後戻りよりも前進を前提に設計されている。

「説明会」の前に置くべき選択肢

「丁寧な説明」という言葉は、すでに決まった方向性を追認させるための儀式であってはならない。10年経っても抑え込めない病害虫を、生産現場から一般消費者の手元にまで流通経路を広げてよいのか——その根本の問いが説明会の議題に上っていない限り、これは説明会ではなく通知会だ。

輸入解禁ありきで手順を進めるのではなく、「輸入しない」という選択肢そのものを協議のテーブルに戻すべきではないか。それを言わずに「丁寧な説明」を掲げるのは、防疫ではなく既定路線の広報にすぎない。

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