イーロン・マスク氏は9月18日、Xに「私の推測では、AIは来年の米国GDP成長率を約2%から約4%へほぼ倍増させる。もっと上振れするかもしれない」と書いた。FRBが9月16日に公表したFOMC参加者の経済見通しでは、2027年の成長率の中央値は2.4%で、最も強気の参加者でも2.9%だ。マスク氏の見立てはこれを大きく上回る。ただし、根拠となる前提は示されていない。
この見方が日本株にもつながるのは、米国のAI投資が、モデルの開発だけでなく、それを支える半導体の製造・検査からメモリ、データセンターの設備にまで広がっているからだ。学習・推論を回すGPUやHBM、それを作る先端工程、データセンターをつなぐ光ケーブル。その多くで、日本企業が工程の要を握っている。
装置で先端工程を押さえる4社
東京エレクトロンは前工程の本丸だ。ウエハーに感光剤を塗る塗布現像装置では世界シェア9割超とされる。成膜やエッチングも含め、先端ロジックとHBMの増産に装置が必要になる。生成AI向けの設備投資が続く限り、装置需要は底堅いとみられる。
アドバンテストは「できたチップが正しく動くか」を見る検査装置の大手だ。SoCテスタ「V93000」はGPUやASIC、CPUの検査で主力機となっており、会社側は2025年の同分野シェアを約66%と説明している。高性能DRAM向けのメモリテスタも堅調だ。AIチップは機能が増え、テスト項目と時間が伸びる。会社は2026年のテスタ市場見通しを、4月時点の109億〜122億ドルから130億〜145億ドルへ引き上げ、生産能力の増強も前倒しする方針を示している。
レーザーテックはEUVマスクの欠陥検査で突出する。最先端チップの設計図にあたるマスクを、露光と同じ波長で見る装置は代替がほとんどない。AI向けの微細化が進むほど、マスク品質が歩留まりを左右する。装置単価も保守も高く、台数が少なくても収益性が出やすい事業だ。
ディスコは研磨と切断の会社だ。HBMはDRAMを何十マイクロメートルまで薄く加工して積み上げる。その研磨(グラインディング)と、CoWoSなどの先端パッケージでダイを切り出すダイシングが同社の領域になる。装置だけでなくブレードなどの消耗品も付くため、稼働が増えるほど収益が積み上がる。
メモリ、搬送、AIインフラまで需要が広がる
キオクシアはNAND型フラッシュの大手だ。学習ではHBMが主役でも、推論ではデータ量が膨らみ、データセンター向けSSDの需要が急増している。HBMの容量不足やコスト高が課題になるなか、同社はGPUが直接アクセスできる高性能SSD「GPシリーズ」の開発を3月に発表し、8月に第1弾の「GP1」を公表した。HBMを補う記憶階層を狙うもので、評価用サンプルは2026年末までに限定顧客向けに提供する予定だ。
ローツェは目立たないが工程の血流だ。半導体工場では、ゴミひとつで不良が出る。同社のウエハー搬送ロボットやEFEMは、製造装置メーカーやファウンドリのクリーンルームに組み込まれる。生成AI向けのHBMや先端パッケージでは、薄いウエハーや反ったウエハーを扱う必要が増え、搬送の難度が上がる。半導体関連装置の受注は2四半期連続で過去最高を更新し、先端工程と中工程の両方で引き合いが続いている。
ルネサスエレクトロニクスはAIサーバーの中身を支える。柱は、サーバーの電源を制御するパワーマネジメントICと、メモリーインターフェースだ。同社は2030年ごろに売上高を2025年度の2倍程度へ伸ばし、AIインフラ向けを全体の4割まで高める構想を示している。足元の比率は1割程度とみられる。2030年以降は、ロボットや次世代車(SDV)に載るフィジカルAI向けを第2の成長エンジンに据える。データセンター投資の次に来る「現場のAI」でも日本勢の出番がある。
配線と投資そのものが日本に還流する
フジクラはデータセンターの「管」を作る。生成AIでラック間・拠点間の通信量が膨らみ、高密度の細径光ケーブルが足りない。同社は国内に約400億円、米国に最大2600億円規模の増産投資を決めた。ただし投資の効果が表れるのは2030年以降の見通しだ。情報通信事業が営業利益の約8割を占める構造なので、AIデータセンターの建設ペースが業績に直結しやすい。
ソフトバンクグループは装置ではなく投資の上流にいる。英Armを抱え、OpenAIへの出資を積み増している。国内では、傘下のソフトバンクが2027年度にAIサーバーの国内製造を始める計画を6月の株主総会で明らかにした。拠点は旧シャープ堺工場の跡地だ。米国の成長率が本当に上振れすれば、計算資源への資金需要も増え、同グループのAI関連事業の前提が強まる。
マスク氏が言うGDP約4%は本人の推測であり、保証ではない。金利、収益化、投資サイクルの一巡は常にリスクだ。ただ、米国がAIで成長を取りにいくなら、必要なのはGPUだけではない。半導体を作り、検証し、つなぎ、支える幅広い設備・部材・インフラが要る。
これらの領域に日本企業が並んでいる以上、「米GDP上振れ」は日本の半導体・AI関連株にとっても前向きな材料になる。

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