【近畿初の“神社倒産”】清和源氏発祥の多田神社、前宮司が名刀「鬼切丸」や境内を担保に2億円超を借り入れ——国史跡に16億円の根抵当権、関係者は「知らされていなかった」

社会
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兵庫県川西市の多田神社が神戸地裁に民事再生法の適用を申請した。神社の倒産は全国3件目、近畿では初めて。創建970年、清和源氏発祥の地とされる別表神社で、前宮司(故人)が名刀や不動産を担保に神社名義で約2億1000万円を借り入れていたほか、これとは別に境内の建物や土地には総額16億円を上限とする根抵当権が設定されていた。神社関係者はいずれも知らされておらず、神社側は「責任者が不在でお答えできない」としている。

由緒ある社が、なぜ再生手続に入ったのか

多田神社は源満仲、源頼光、源頼信、源頼義、源義家の五公をまつる。境内約5万平方メートルは国史跡、本殿・拝殿・随神門などは国の重要文化財。宝物殿には源氏の宝刀「鬼切丸」が伝わる。地元では祭りや初詣の場として親しまれてきた。帝国データバンクによると、宗教法人としての神社倒産は神奈川・伊勢山皇大神宮(2003年破産)、青森・東照宮(2012年破産)に次ぐ3例目で、近畿では初めてとなる。負債総額は調査中。同社は2026年8月24日までに民事再生法の適用を申請し、神戸地裁から監督命令を受けた。

「グランピング」計画と2億1000万円——資金は個人口座へ

民事訴訟の判決などによると、2022年頃、当時の宮司(2024年2月死去)が「境内でのグランピング事業」など実態のない計画を金融会社に持ちかけ、名刀「鬼切丸」などの宝物や神社が所有する駐車場などの不動産を担保に、3社から計約2億1000万円を神社名義で借り入れた。資金は宮司の個人口座に振り込まれた直後に外部へ送金され、神社の会計には一切反映されなかった。神社側は「事業に実体はなく、資金も神社のために使われていない」として返済義務を争ったが、「貸し手に過失はない」として敗訴が続き、多額の返済義務を負う事態となった。

国史跡の境内に16億円の根抵当——契約書は残っていなかった

これとは別に、国史跡の境内では、国の重要文化財に指定される本殿をはじめ神社内の全ての建物と土地が登記され、2023年9月から2024年2月にかけて、計4件・総額16億円を上限(極度額)とする根抵当権が設定されていた。債権者は京都市の不動産仲介業者、飲食業の男性2人(京都市、大阪府岸和田市)、中古車販売業の男性(同府豊中市)の計4者で、極度額はそれぞれ7000万円から10億円だった。設定したのは前宮司とみられるが、他の神社関係者はいずれも知らされておらず、契約書も残されていなかったという。前宮司は2024年2月に急死。同年9月、不動産仲介業者の申し立てにより神戸地裁尼崎支部が競売開始を決定し、神社側は異議を申し立てて提訴した。交渉は長期化し、早期解決のめどが立たないまま、裁判所の関与のもとでの再生に舵を切った。

個人の借金か、法人の破綻か

刀も境内も、本来は一個人の財布ではない。国史跡に、関係者不在のまま巨額の根抵当が付く。実態のない事業計画で神社名義の融資が通る。資金の行き先は、再生手続の中でどこまで明らかにされるのか。宗教法人は税制優遇を受けつつ、意思決定が宮司個人に集中しやすい。今回はその脆弱さが史跡の上に出た。刑事責任の有無は現時点で断定できない。確認できるのは、判決・登記・帝国データバンク・地元報道が示す経緯までだ。これから問われるのは、文化財と祭祀を守りつつ、誰が何を担保にし、金はどこへ動いたかを公開できるかどうかである。

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