島根県益田市から、イーロン・マスク氏へ異例の公開書簡が出された。差出人は益田市議会議長の佐々木惠二氏。柴犬の聖地としての縁を軸に、友情と来訪を求める内容だ。
2026年6月17日、美都町特産観光協会公式アカウントは、マスク氏のアカウントを直接指定して英文・和文の手紙を投稿した。書簡では、佐々木氏が自ら「益田市議会議長」と名乗り、こう記している。
「益田市は、美しい山・川・海に恵まれた自然豊かな地域であり、歴史と文化を有するまちです。また、世界中で愛されている柴犬のゆかりの地(発祥の地・聖地)の一つとしても知られています」
続けて、近年はイノベーションとデジタル産業の振興に取り組み、情報技術やデジタル分野を学ぶ短期大学の設立準備を進めているとも説明した。そのうえで、「世界中の人々に大きな影響と感動を与え続けているあなたと、友情と意義あるつながりを築きたい」とし、機会があれば益田市へ迎えて自然、文化、地域の可能性を紹介したいと述べている。
同日には別投稿でも、「いつの日か、イーロン・マスク氏が愛犬FLOKIとともに益田市を訪れ、この地の自然や文化、そして柴犬の魅力を体感してほしい」と呼びかけた。
背景にあるのは、柴犬の祖とされる石州犬「石号(いしごう)」だ。1930年に益田市美都町で生まれ、猟犬として育てられた後、日本犬保存会に登録されて高く評価された。現在の柴犬の血統の多くがこの石号にたどり着くとされ、地元では記念館や石像、空港でのお出迎えイベント、「柴犬の里まつり」などを通じて聖地化を進めている。
この動きは観光PRにとどまらない。マスク氏の愛犬が柴犬であることをきっかけに、美濃商工会などが中心となって「益田市にイーロン・マスク氏を呼ぼう推進本部」が設立された。益田市公式アカウントもこの取り組みを紹介し、市の魅力発信と観光振興につなげたいとしている。
マスク氏は2021年、「My Shiba Inu will be named Floki」と投稿し、その後FLOKIの写真を公開した。以来、FLOKIはマスク氏の投稿にたびたび登場し、関連するミームコインの値動きにも影響を与えてきた。地元関係者は「ビジネスの話では難しくても、愛犬のことなら話が通るかもしれない」と期待を寄せる。
書簡の末尾には、佐々木氏の肩書として「益田市議会議長・美都町特産観光協会・美濃商工会」と並ぶ。地方都市の議長が、世界的な実業家に対して犬を媒介にした公開招待を行うのは珍しい。実現するかどうかは未知数だが、過疎化が進む地域が、日本固有の犬種とデジタル人材育成をセットで売り込む試みとして、動きは続いている。


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