コメ農家の廃業・倒産が、今年1〜8月ですでに32件。廃業28件、倒産4件。このペースなら4年連続で過去最多を更新する。昨年は「令和の米騒動」で店頭の米が不足し、価格が高騰した。農協が収穫前に農家へ支払う前払い金、いわゆる「概算金」も大きく上がった。この前払い金は、事実上その年の売上の土台になる。だから概算金が上がれば、多くの農家は収入が増え、利益も増える。実際、利益が増えた農家は約8割に達した。一時的には儲かった。だが、それで問題は終わっていない。
民間在庫は過去最大まで積み上がり、今年の新米は大幅に値下がりする見通しが強い。肥料も農薬もトラクターも高いまま。儲かった一年の利益を、古い機械の買い替えにも、跡を継ぐ人を育てることにも回せない。先が見えないまま、「もう続けられない」と判断して事業を閉じる農家が増えている。
ここが本質。米価が上がっても離農が止まらないのは、一年だけ儲かっただけでは、次の十年を支える仕組みにならないからだ。高齢化が進んでいるのは事実だ。だがそれは、最初から全部の原因ではない。先行きが見えない政策が投資を先送りさせ、跡を継ぐ人を減らし、その結果として高齢化と廃業が加速している。年を取ったから辞めた、だけでは説明がつかない。
国の動きも現場を振り回す。米が足りない年は、政府が倉庫に蓄えていた備蓄米を市場へ放出し、店頭に米を増やして価格を抑える。逆に余りそうな年は、政府が備蓄米を買い戻す判断が遅れ、市場に米が残り、価格が落ちる。不足のときも余りのときも、調整の負担はいつも農家側に来る。作る人だけが、政策の後始末を背負わされる。
スーパーの5キロが安くなる話と、田んぼが消える話は別物ではない。安くなった先に残るのは、外国から買う米と、倉庫に眠る在庫と、もう作れなくなった国土だ。安さの裏側で失われるのは、日本が自分の田んぼで主食を賄う力そのものだ。
「経営が成り立たない」は農家の弱音ではない。その年の店頭価格に合わせて政策を動かし、主食の安定を後回しにしてきた国の仕組みの欠陥だ。
米は商品である前に、安全保障だ。店頭価格が上がったか下がったかを見てから動く国は、価格の波が去ったあとで、農業の担い手そのものを失う。田んぼが減ってから備蓄を語っても遅い。種をまき、水を張り、翌年の食卓まで責任を背負ってくれる農家の人たちが、もうそこにはいないからだ。


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