9月29日(米国時間)、著名な投資家でありトランプ政権のAI・仮想通貨責任者であるデイビッド・サックス氏が、世界最大のオンライン百科事典であるWikipediaに対する深刻な懸念をX(旧Twitter)で表明しました。サックス氏の指摘は、AIモデルのトレーニングにおける信頼できる情報源としてのWikipediaの役割に疑問を投げかけるものであり、これに対し、イーロン・マスク氏は自社のAI企業xAIが「Grokipedia」と呼ばれる新しいインターネット上の百科事典を構築中であると発表しました。
Wikipediaへの警鐘:知識の偏りがAIに与える「巨大な問題」
デイビッド・サックス氏(David Sacks)は、まずWikipediaが「絶望的に偏向している」(hopelessly biased)と強い言葉で批判しました。
サックス氏は、この偏向の原因として、略歴(bios)を維持し、「合理的な修正の試みと闘う」「左翼活動家の大群」(An army of left-wing activists)の存在を指摘しています。
さらに重要な点として、サックス氏は、この偏向が知識の伝播に与える影響について警鐘を鳴らしています。WikipediaはしばしばGoogle検索結果のトップに表示されることに加え、「現在、AIモデルのトレーニングにおける信頼できる情報源となっている」と述べています。偏向した情報源がAIの基盤となる状況を鑑み、「これは巨大な問題である」(This is a huge problem)だと強く訴えました。
マスク氏の反応:偏向を超越する「Grokipedia」の構築へ
サックス氏のこの構造的な問題提起を受けて、9月30日(米国時間)、xAIを率いるイーロン・マスク氏は、既存の知識基盤を根本的に改善する対抗策があることを打ち明けました。
マスク氏は、xAIが現在「Grokipediaを構築中」であることを発表。この新しい知識ベースが完成すれば、「Wikipediaの大幅な改善になるだろう」(Will be a massive improvement over Wikipedia)と述べています。
マスク氏は、Grokipediaの構築を単なる百科事典の代替案としてではなく、xAIのより壮大な目標と結びつけています。彼は、Grokipediaの構築は、xAIが最終目標として掲げる「宇宙を理解する」(understanding the Universe)ための「必要なステップ」(necessary step)であると明言しました。
気になるリリース時期ですが、マスク氏は「年内に修正する見込み」とXで投稿しています。
この一連の動きは、AIの信頼性と客観性を担保するために、現在広く利用されている知識源(Wikipedia)が持つ構造的な偏りに対処する必要があるという、技術開発コミュニティ内の認識の高まりを促すものとなりそうです。
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