名古屋市の岩井智史さん(56)は、新型コロナワクチンの3回目接種の3日後から膝の痛みに襲われ、その後は腕や肩にも痛みが広がった。原因は特定されないまま、腰の皮下に左右一つずつ、脊髄へ微弱な電流を流す装置を埋め込む手術を受けた。医療費は約700万円。国の予防接種健康被害救済制度に申請したが、審査結果は「否認」だった。岩井さんは「大きな手術もしたので、まさか『否認』されるとは思っていなかった」と話している。CBCテレビ(大石邦彦アンカー)が報じた。
接種3日後の膝の痛みから、握力8キロまで低下
異変が起きたのは4年前の3月。3回目接種の3日後、登山中に膝が急に痛くなった。当時はワクチンとの関連は考えておらず、山で痛めたと思ったという。整形外科では異常は見つからなかったが、症状は改善しなかった。4回目接種の後には腕や肩にも痛みが出た。
「とにかく常に張っていて、ズーンとした感じ。押すと硬くて、なんか痛い」。大学病院で関節リウマチやパーキンソン病の精密検査を受けても原因は分からず、この時点で初めてワクチンの影響を疑ったという。診断名は、神経の障害によって痛みが起きる「末梢神経障害性疼痛」。担当医の所見は、接種後の症状であり因果関係は証明できないが、否定もできない、というものだった。
岩井さんは、年に1回も風邪をひかない体質だったと振り返り、「証明できるものがないので、これで納得せざるを得ない。コロナワクチンの影響しかないと思う」と述べている。握力は8キロまで落ちた。
「痛いの痛いの飛んでいけ」を装置で再現、自己負担は約70万円
2年前、医師の勧めもあり、名古屋大学医学部附属病院麻酔科で脊髄刺激療法の装置を埋め込んだ。腰の下に左右一つずつあるのは、約10年もつバッテリーと電流発生装置で、そこから脊髄表面近くまで電線が延びる。神経に微弱な電流を流し、異常な痛みの信号が伝わりにくくする治療だ。
同院の担当医は、痛いところをさすると和らぐ現象を引き合いに、「『さする神経』を直接脊髄で刺激して痛みの伝わりを軽減する。『痛いの痛いの飛んでいけ』を科学的に行っている。岩井さんの場合は、とてもこの治療の効果があった例」と説明している。手術後、握力は20キロに戻り、手や膝の痛みはほとんどなくなった。夜中に目が覚めるひじの痛みも、ここ1か月ほど起きていないという。
費用は約700万円。保険適用などで自己負担は70万円程度だった。岩井さんは「痛みがある毎日の生活は、精神的にもつらくなる。本当に入れてよかった」と話している。痛みは軽減されたが、原因も根治の方法も分かっていない。
「ワクチンが原因ではない」と否認、取り消しを求める
岩井さんはワクチンによる健康被害として国へ救済を申請した。しかし今年出た審査結果は「否認」で、「ワクチンが原因ではないと考えられる」とされた。通知を見たときの感想を問われ、「大きな手術もしたので、まさか『否認』されるとは思っていなかった」と答えている。いまは否認決定の取り消しを求めている。
予防接種健康被害救済制度では、厳密な医学的因果関係までは求めず、接種によって起こることを否定できない場合も対象とする、と厚労省は説明している。一方、個々の事案では否認も少なくない。CBCの報道によれば、あ9月14日時点の新型コロナワクチン関連の救済認定は9504件で、過去の全予防接種の認定数を上回る。それでも同局の報道は、国がワクチン後の後遺症の存在そのものを認めていない、と指摘している。
今年8月24日の「薬害根絶デー」では、全国薬害被害者団体連絡協議会に「新型コロナワクチン後遺症患者の会」が初めて正式参加した。同会の木村瑞穂代表は、薬害を再び起こさないことと、被害者として訴えられるようになる点を挙げた。下半身まひを訴える櫻川博文さんは、副反応評価の多くが「評価不能」であるにもかかわらず国が「重大な懸念はない」と繰り返す姿勢に、真摯な向き合いを求めた。
今年7月、国は安全性に関する1200本超の論文を精査し、問題はないと結論づけた。日本感染症学会など医学団体も連名で接種を強く推奨する声明を出し、10月からは再び新型コロナワクチンの定期接種が始まった。岩井さんは「結果は評価不能。原因不明で因果関係は分からなかった。もう少し研究をしてほしい」「(接種後に)思わぬ症状が出た時に救済をすることが必要だ」と話している。


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