千葉県市原市の山倉水上メガソーラー、2018年3月に完成、2019年9月に台風による損壊、2021年10月に復旧も必要性に疑問—近隣レジャー施設との共存も課題

社会
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千葉県市原市の山倉ダムに設置された国内最大規模の水上太陽光発電所「山倉水上メガソーラー発電所」(出力13,700kW)が、2019年9月の台風15号による甚大な被害と火災から、約2年を費やした復旧工事を経て、2021年10月1日に再稼働を果たしました。しかし、運用開始からわずか1年半でパネルの約8割が損壊し、復旧に長期間を要したこの事例は、近隣に子ども向けレジャー施設「千葉こどもの国キッズダム」がある地域でのメガソーラー設置の必要性やリスクについて検証の余地があります。

被害の経緯と詳細

山倉水上メガソーラーは、東京センチュリーと京セラの共同出資により、京セラTCLソーラー合同会社が運用。2018年3月に運用を開始しましたが、2019年9月の台風15号の強風(設計風速秒速41.53mを超える)により、太陽光モジュール50,904枚の約8割が破損する壊滅的な被害を受けました。強風で水上のパネルが吹き寄せられ、重なり合ったりめくれ上がったりした結果、一部が発火し約50枚が焼損する火災も発生。経済産業省の報告では、パネル同士の衝突や摩擦による発熱が火災の原因と推測されています。

復旧工事と安全対策

事故を受け、経済産業省と千葉県企業局の指導のもと、復旧工事と再発防止策が実施されました。主な対策は以下の通りです:

  1. フロートアイランドの分割:水上に浮かぶ太陽光発電システムを6つに分割し、風圧による力の集中を軽減。
  2. アンカーの大幅増強:フロートを固定するアンカーを事故前の420本から904本に倍増し、強風への耐性を強化。
  3. 火災防止策:電気ケーブルをプラスとマイナスに分け、保護管で覆うことで電気火災のリスクを低減。

復旧後の発電所は、太陽光モジュールを44,898枚(270Wと315Wを組み合わせ)に減らし、出力はやや縮小した形で再稼働しました。

法制度への影響と地域への影響

この事故は、水上太陽光発電の安全基準を見直す契機となり、2020年6月に電技解釈が改正され、アンカーやフロートの性能基準が明確化されました。しかし、完成からわずか1年半での大規模損壊と2年にわたる復旧期間は、メガソーラーのリスクを浮き彫りにしました。特に、山倉ダム近くには家族連れに人気の「千葉こどもの国キッズダム」があり、景観や安全性の観点からメガソーラーの設置場所としての適切性が問われています。火災や破損パネルの飛散リスクが、レジャー施設の安全性や地域の魅力に影響を与える可能性も無視できません。

メガソーラーの必要性への疑問

再生可能エネルギーの推進は脱炭素社会実現に不可欠ですが、山倉水上メガソーラーの事例は、コスト、リスク、地域特性のバランスを再考する必要性を示しています。短期間での壊滅的被害と長期間の復旧作業は、投資対効果や地域住民への影響を考慮すると、メガソーラーがこの地域に最適な選択肢だったのか疑問が残ります。地域のレジャー施設との共存や、景観・安全性を損なわない代替案の検討が、今後のエネルギー計画に求められます。

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