環境省と経済産業省は、太陽光パネルの製造業者などに対し、リサイクル処理を義務付ける法案を今国会に提出する計画でしたが、この法案の提出を見送る決定をしました。両省は、制度設計案そのものを再検討する視点に立ち、引き続き検討作業を進めるとしています。
リサイクル費用と埋め立て費用の隔たり
今回の見送りの背景には、制度設計における費用の問題が横たわっています。現状、太陽光パネルの埋め立て処分費用とリサイクル費用との間に大きな差額が存在しています。
あるリサイクル会社への取材によると、パネル1枚をリサイクルする場合の費用はおよそ3,000円ですが、埋め立て処分の場合の費用はおよそ2,000円にとどまります。処理するパネルの枚数が多くなるほど、この差額は拡大する構造にあります。
新制度や法案の審議を行う内閣法制局は、このコスト負担の在り方について判断を示しました。自動車や家電製品などのリサイクルでは所有者が費用を負担する形式が採られているのに対し、太陽光パネルのみ製造業者等にこの差額を負担させ、リサイクルを義務付けることについては、現時点では合理的な説明が難しいとの見解に至ったためです。
当初案ではメーカーにリサイクル費用を負担させる方向で検討されていましたが、太陽光パネルは自動車や家電よりも使用期間が長いことに加え、海外製品の場合、廃棄の時点でメーカーがすでに倒産しているケースがあることも、メーカー負担を困難にする要因となっています。
再エネ拡大への懸念と専門家の指摘
リサイクル義務化の遅延は、再生可能エネルギー導入拡大にとって大きな障害となるとの懸念が示されています。環境NGOなどは最近、リサイクル義務化の必要性を訴える共同声明を発表しました。すでに使用済みの太陽光パネルの放置は、地域社会におけるトラブルの主要な原因の一つとなっています。
環境行政法の専門家は、メーカーが製品使用後の回収や資源化に責任を負うことの重要性を強調します。そうすることで、製造業者はよりリサイクルに適した商品の開発に努めるようになり、無駄の多い使い捨て設計や過剰包装などを抑制する効果が期待できるとしています。
環境省の関係者によると、リサイクル費用の低減を目指すため、来年度の予算案にリサイクル技術の研究開発費などを盛り込む案が検討されているとのことです。専門家は、過去のフロンガスやアスベスト、最近話題のリチウムイオン電池の事例を引き合いに出し、利便性ゆえに急速な導入が進められてきた一方で、資源として再生利用するまでの「製品のライフサイクル全体」を見通し、検討しておく必要性があったと指摘しています。
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