安倍晋三から高市早苗へ、統一教会との「蜜月」は継承されたのか?内部文書が暴く不都合な真実

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韓国ハンギョレ新聞が独占入手した旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の内部文書「TM特別報告」。この文書は、安倍晋三元首相と教団がいかに深く癒着していたかを赤裸々に暴き出した。

だが、その衝撃は安倍氏一人に留まらない。本記事では、この内部文書が安倍氏の後継者と目される高市早苗氏にも焦点を当てていたという、さらに根深い問題を徹底的に告発する。

文書に記された生々しい記録は、彼女と統一教会の関係が、決して表層的なものではない不都合な真実を物語っている。

安倍政権と統一教会の「ギブ・アンド・テイク」の実態

高市氏の問題を理解するためには、まず安倍元首相と統一教会の関係が、単なる思想的共鳴などではなく、選挙における「票」と政治的影響力を交換する、極めて実践的な「取引関係」であったことを把握する必要がある。この強固な癒着構造こそが、全ての背景となっているからだ。

1.1. 選挙支援という名の「取引」

2019年7月2日、参院選を目前に控えた自民党本部。ここで安倍晋三首相(当時)と徳野英治・日本統一教会会長(当時)による「20分間の面談」が行われた。内部文書「TM特別報告」によれば、この面談の目的は明確だった。

「安倍首相が推薦する北村経夫議員を、私たち団体がどこまで応援するか決意を聞きたかったのは明らかだった」

報告書はこのように記している。安倍氏からの支援要請に対し、教団側は「今までは10万票だったが、今回は30万票とし、最低20万票を死守する」と約束した。この確約に対する安倍氏の反応は、両者の関係性を象徴している。

「(安倍首相が)その(選挙支援)について대단히 아주 기뻐하고 안심하는 것 같았다(非常に喜んで安心しているようだった)

この一文は、統一教会の組織票が選挙の当落を左右するほど、安倍氏にとって死活的に重要であったことを雄弁に物語っている。

1.2. 組織票による影響力の行使

統一教会の影響力は、特定の候補者一人に留まらなかった。徳野元会長は、2021年の衆院選後、こう誇らしげに報告している。

「私たちが応援した国会議員総数が自民党だけで290人に達する

この組織票の威力は絶大だった。先の参院選で教団の全面支援を受けた北村経夫議員は、当選後に渋谷区松濤の教団本部を自ら訪問し、「報恩」の意を示した。報告書によれば、得票数は約18万票で目標の20万票には届かなかったものの、「前回の選挙より約4万票増え、自民党本部でも非常に高く評価された」という。この結果を受け、北村氏は「私たち統一運動のおかげで当選した。今後も私たちと運命を共にする」と決意を表明したと記録されている。目標未達ですら高く評価されるこの関係は、統一教会が自民党内でいかに広範かつ組織的な影響力を行使し、政治家を事実上の支配下に置いていたかを示す動かぬ証拠である。

この安倍元首相を頂点とした強固な癒着関係は、当然ながら、彼の後継者選びにも影響を及ぼす土壌となっていった。

高市早苗氏:統一教会が望んだ「安倍の後継者」

内部文書「TM特別報告」は、高市早苗氏が単なる関係者の一人ではなく、安倍元首相からその関係性を引き継ぐ形で、統一教会からも「後継者」として強く期待されていた事実を告発している。この事実は、彼女と教団の関係がいかに深刻であるかを示している。

2.1. 内部文書に記録された「高市早苗」

驚くべきことに、「TM特別報告」において、高市氏の名前は実に32回も登場する。特に注目すべきは、2021年の自民党総裁選に関する徳野会長の報告だ。そこには、教団が高市氏をいかに特別視していたかが明確に記されている。

• 安倍元首相の強力な推薦

• 後援会との親密な関係

• 「天の願い」とされた総裁就任

教団が特定の政治家の総裁就任を「天の願い」とまで表現した事実は、極めて異様である。これは、高市氏が総裁になることが、教団の組織的な悲願であったことを示唆している。

2.2. 安倍氏から続く「縁」の継承

報告書の中で、高市氏への支持が常に安倍元首相からの「推薦」という文脈で語られている点は見過ごせない。これは、安倍氏と統一教会の蜜月関係が、そのまま高市氏へとスライドし、継承されるべきものだと教団側が認識していたことを意味する。高市氏自身がこの構造をどこまで自覚していたかは定かではない。しかし、少なくとも教団側は、彼女を「安倍路線の継承者」として明確に位置づけ、その総裁就任に組織の命運を賭けていたのだ。

だが、この根深い関係性は、2022年7月8日、安倍元首相の突然の死によって激しく揺さぶられ、その闇が白日の下に晒されることになる。

暗殺事件後の隠蔽工作と教団の狼狽

安倍元首相暗殺という未曾有の悲劇は、皮肉にも、統一教会と政界の歪んだ関係を白日の下に晒す引き金となった。事件直後の教団の対応は、彼らが隠し続けてきた関係の異常性を自ら証明するものであった。

3.1. 犯人記録の即時削除

犯人である山上徹也容疑者が教団信者の息子であると判明した直後、教団は衝撃的な行動に出る。事件からわずか2日後の2022年7月10日の報告書には、次のように記されていた。

「(山上容疑者が教会の)所属になっていたので、本部会長の指示で会員記録を削除した

この証拠隠滅としか言いようのない行動は、教団と政治家の関係が露見することへの極度の恐怖を物語っている。彼らが守りたかったのは、一人の信者ではなく、長年かけて築き上げた政界との「聖域」だったのだ。

3.2. 危機分析と「VIP基盤の崩壊」への恐れ同日の報告書には、「A首相関連」と題された内部の状況分析メモも含まれていた。その内容は、教団の狼狽ぶりを如実に示している。

• 「参議院選挙以降に矢を向けられる可能性」

• 「宗教法人抹殺」

• 「VIP渉外基盤の崩壊」

これらの記述から明らかなように、教団が最大の危機と捉えていたのは、社会的な批判や宗教法人格の剥奪以上に、「VIP」、すなわち政治家とのパイプラインが崩壊することであった。彼らの権力基盤そのものが、政治家との癒着によって成り立っていたことの何よりの証左である。そして、教団が自らの存続をかけてまで隠蔽しようとした「VIP」との癒着の核心に、安倍氏だけでなく、その後継者と目された高市氏も含まれていたことは、もはや疑いようがない。

問われる高市早苗氏の政治的資質

これまで見てきたように、高市早苗氏と統一教会の関係は、安倍元首相から続く自民党の構造的な問題の一部である。内部文書「TM特別報告」は、彼女がこの問題の「継承者」として教団から認識されていた動かぬ証拠だ。

高額献金問題などで信者やその家族の生活を破壊し、東京地裁から「悪質」と断罪され解散命令を受け、現在も係争中の反社会的カルト団体。内部文書が暴いたのは、単なる一個人の資質の問題ではない。特定の宗教団体が票と引き換えに政策決定に影響を及ぼし、国のリーダー選出にまで介入しようとする、民主主義の根幹を揺るがす構造そのものである。高市氏に問われるのは、この構造を認識し、断ち切る意志があるのかという、政治家としての根本的な資質なのである。

参照情報

【独自】「安倍首相、選挙支援に非常に喜んだ」旧統一教会、内部報告文書で言及
「韓鶴子特別報告」に高市現首相の名前も32回登場 日本の政界と結んだ「ギブアンドテイク」モデルを韓国にも適用しようとした情況
【独自】「安倍首相、選挙支援に非常に喜んだ」旧統一教会、内部報告文書で言及(ハンギョレ新聞) - Yahoo!ニュース
「(安倍首相は)それ(選挙支援)について非常に喜んで安心しているようだった」 2019年7月2日、日本の参議院選を前に自民党本部の総裁室で安倍晋三首相と面談した徳野英治・世界平和統一家庭連合(
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