物価高騰が止まらず、実質賃金が伸び悩む中、私たちの家計をさらに追い詰める「新たな負担」が始まります。政府は令和8年度(2026年度)の税制改正大綱において、2027年(令和9年)から「防衛増税」を開始する方針を決定しました。

政府は「国民の負担感は変わらない」と繰り返していますが、これは巧妙に仕組まれた増税に過ぎません。本質を見抜けば、そこにあるのは不誠実どころか、国家安全保障を盾にした「卑怯なすり替え」です。公認会計士・さとうさおり氏が鋭く切り込む「防衛特別所得税」について取り上げます。
税率は「2.1%」のまま、防衛費を盾にした「卑怯な付け替え」

2027年から導入される「防衛特別所得税」は、ゼロから新設されるわけではありません。現在、私たちは所得税額に2.1%を上乗せした「復興特別所得税」を支払っていますが、今回の改正は、この内訳を以下のように「分割」するものです。
• 現在: 復興特別所得税(2.1%)
• 2027年(令和9年)以降: 復興特別所得税(1.1%)+ 防衛特別所得税(1.0%)

一見すると、合計2.1%で維持されるため、手取り額に変化はないように見えます。しかし、さとう氏はこの手法を「卑怯」と述べています。震災復興という本来の目的が、建物再建などの物理的な目処が立った途端、なし崩し的に「防衛費」という別の財布に付け替えられたのです。「国防のためなら仕方ない」という国民感情を逆手に取り、増税への抵抗感を削ぐ巧妙な数字のマジックと言えるでしょう。
本来なら「減税」だったはず、10年延長という名のステルス増税

この政策が「実質的な増税」である最大の根拠は、支払う「期間」に隠されています。
本来、復興特別所得税は2037年(令和19年)に終了するはずの時限立法でした。つまり、私たちはあと十数年待てば、2.1%分の減税を享受できるはずだったのです。ところが政府は、防衛増税の開始と引き換えに、この終了期限を2047年(令和29年)まで、一気に10年間も延長することを決めました。

税率が同じでも、支払う期間が延びれば、生涯で支払う総額は確実に跳ね上がります。さとう氏はこの異常な期間延長について、次のように警鐘を鳴らしています。
普通によくよく考えてみたら期間伸びてるし……これ実質的に負担する金額っていうのは増加する。だから増税ですね
復興が一段落したはずの税金を10年も引き延ばし、その枠を防衛費に転用する。これは、私たちが将来手にするはずだった「減税の権利」を奪い取る、極めて悪質なステルス増税です。

時限立法から「白紙委任」へ、恒久化する増税の恐怖
さらに注視すべきは、新設される「防衛特別所得税」の適用期間に付された不気味な文言です。
震災復興のための税は、期間が厳格に定められた「時限立法」でした。これに対し、防衛特別所得税の期間は「当分の間」とされています。法務・税務の文脈において、この言葉は「期限を定めない」ことと実質的に同義です。

つまり、震災復興という「終わりがある目的」から、防衛という「終わりがない目的」へと税の性質が変質し、一度始まったら二度と止まらない「恒久増税」への扉が開かれたことを意味します。これは国民が気づかないうちに、国家に「白紙委任状」を渡してしまっているようなものです。
予見される最悪のシナリオ、2.1%すべてが「防衛税」になる日
さとう氏は、この増税が1%で終わるとは考えていません。そこには、国民の不満を小出しにしながら負担を既成事実化していく、以下の「3段階の増税スライド」が透けて見えます。

• 第1段階: 現在の2.1%を「復興1.1%」と「防衛1.0%」に分割し、負担感を麻痺させる。
• 第2段階: 延長された復興税(1.1%分)が2047年にようやく期限を迎える。
• 第3段階: 復興税が消えた「空き枠」に防衛税をスライドさせ、最終的に2.1%すべてを「防衛特別所得税」として恒久化する。
物理的な復興が終わってもなお税金を引き延ばし、別の名目にすり替えていく。この「なし崩し的な増税」のプロセスは、今後も私たちの財布を静かに侵食し続けるでしょう。
知らぬ間に書き換えられるルールに、どう向き合うか

2027年から始まる税制改正は、単なる「内訳の変更」ではありません。それは、私たちが本来手にするはずだった2037年の減税を奪い、さらに「当分の間」という無期限の負担を強いる、実質的な超長期増税の始まりです。
「負担感は変わらない」という言葉を信じ、無関心でいることは、政府に「いくらでもルールを書き換えていい」という免罪符を与えるのと同じです。復興が一段落した今、その財源を巧妙に付け替える手法が果たして正当と言えるのか。
「負担感は変わらない」というトリックの裏側にある、10年間の延長と恒久化という真実を知った今、あなたはこの税制をどう受け止めますか?
参照情報


人気記事