釧路湿原周辺のメガソーラー開発地でタンチョウが「求愛ダンス」を一生懸命踊っています。未来のエネルギーを生み出すための、無機質な開発予定地。その上で、生命の継続という最も根源的で神聖な営みが繰り広げられていました。

社会
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11月8日付けで朝日新聞が報じた1枚の写真(撮影:加藤丈朗氏)が衝撃的でした。北海道釧路湿原周辺のメガソーラー開発の地でタンチョウが「求愛ダンス」を一生懸命に踊っていたのです。場所は未来のエネルギーを生み出すための、無機質な開発予定地です。その上で、生命の継続という最も根源的で神聖な営みが繰り広げられていました。

脱炭素社会へ。クリーンエネルギーへの移行が急務とされる現代において、それは誰もが疑わない「正しい」道筋のはずでした。しかし、環境に優しいはずのエネルギー政策が、かけがえのない自然を脅かす場所だとしたら?

私たちはその矛盾にどう向き合えば良いのでしょうか。北海道釧路市で今、まさにそんな問いを私たちに突きつける、あまりにも皮肉な光景が広がっています。

工事の停止がもたらした静寂

北海道釧路市にある、大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の建設予定地。本来ならば重機の轟音が響き、土埃が舞っていたであろうその場所に、今、国の特別天然記念物であるタンチョウの群れが翼を休めています。この開発現場は現在、「土壌調査の手続きに問題があった」ことなどから工事が中断されています。

人の気配は消え、予定されていた喧騒の代わりに訪れた、予期せぬ静寂。皮肉にも、その「止まった時間」が、警戒心の強いタンチョウにとって安心して過ごせる聖域を生み出したのです。

開発の地で交わされる「愛の確認」

より深く胸を打つのは、タンチョウたちがそこで見せた行動です。彼らは向かい合って翼を広げ、優雅に舞う「求愛ダンス」を交わしていました。この神聖な舞の意味を、地元の釧路市丹頂鶴自然公園は次のように解説しています。

この時期の釧路湿原では夫婦の愛の確認などを目的とした「求愛ダンス」をみられることがある

未来のエネルギーを生み出すための、無機質な開発予定地。その上で、生命の継続という最も根源的で神聖な営みが繰り広げられている。この強烈なコントラストは、この光景が単なる珍しい出来事ではなく、私たちに何か重要なメッセージを伝えていることを示唆しています。

日本が抱えるジレ​​ンマの縮図

この釧路での一場面は、現代日本が直面する大きなジレンマの縮図と言えるでしょう。この開発をめぐっては、「釧路湿原の希少な野生生物の保護方法や開発手順に問題があるとして議論を呼んでいる」と報じられています。

再生可能エネルギーの推進は、気候変動対策として不可欠なものかも知れません。しかしその一方で、貴重な自然環境や、そこに息づく生物多様性をどう守るのか。二つの重要な価値が、日本各地で衝突しています。一対のタンチョウが舞う優雅な姿は、美しいからこそ、私たちの選択をより一層困難にする。この光景は、再生可能エネルギーと目の前の生命のどちらかを選べという、答えの出ない課題そのものを突きつけているのです。

未来への問い

止まったメガソーラーの予定地で、タンチョウが愛を確かめ合うように舞う。この皮肉なまでに美しい光景は、私たちに静かに、しかし鋭く問いかけています。

私たちは、未来のエネルギーを確保するために、今ここにある生命の輝きを、どれだけ見過ごすことが許されるのでしょうか?深く考えさせられる写真でした。

参照情報

メガソーラー予定地でタンチョウが求愛ダンス(朝日新聞) – Yahoo!ニュース https://share.google/jsFZjIwJ4X6YM6IiT

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