歴史的円安162円台、170円も視野に?中小零細企業が苦しむ中、「逆プラザ合意」は本当の解決か?食料自給率100%達成へ、産業構造転換の好機に

経済
この記事は約3分で読めます。

1ドル=162円台という歴史的な円安が続いている現在、市場の一部では「このまま170円台に突入するのではないか」という声も出始めている。時事通信の報道でも、円安が家計に年間約1万5534円の負担増をもたらす可能性が指摘され、中小企業の倒産も円安要因で上半期45件(前年比1.3倍)と増加傾向にある。

この動きを、いわば1985年の「プラザ合意」とは正反対の「逆プラザ合意」と呼ぶことができるかもしれない。プラザ合意ではG5諸国が協調してドル高是正に踏み切り、その結果として急速な円高が進み、日本の製造業は輸出競争力を失った。今起きている円安は、当時のような各国の政策合意によって導かれたものではなく、日米の金利差を主因とする市場動向の結果である。しかし、その帰結として輸出企業には円高局面とは正反対の追い風が吹き、逆に内需型の中小零細企業や家計には重荷がのしかかっているという構図は、まさにプラザ合意時とは立場が逆転した現象と言える。その意味で、政策的な「合意」ではないにせよ、影響の方向性としては「逆プラザ合意」と呼ぶにふさわしい局面にあるのではないか。

中小零細企業・農家・個人が直面する現実の痛み

円安は確かに一部の大手製造業にとってはプラスに働くが、輸入に依存する中小零細企業にとっては深刻な打撃だ。原材料・エネルギー・飼料の高騰でコストが跳ね上がり、価格転嫁が難しい企業は経営を圧迫されている。農家にとっては特に厳しく、肥料や飼料の輸入価格上昇が直接的に経営を脅かしている。

家計も例外ではない。食品や日用品の値上がりで、すでに家計簿に重くのしかかっている。帝国データバンクや東京商工リサーチのデータが示すように、円安倒産は高水準で推移しており、「卸売業・小売業を中心に苦しい状況が続いている」のが実情だ。

イラン・米の軍事的緊張が突きつけた教訓

最近のイランとアメリカをめぐる軍事的緊張・衝突の動きは、私たちに重要な教訓を突きつけた。エネルギーや食料の多くを輸入に頼る日本の脆弱性が、改めて浮き彫りになったのだ。地政学的リスクが顕在化すれば、即座に輸入コストが跳ね上がり、国民生活と産業基盤を直撃する。

この状況下で、食料自給率の100%達成はもはや理想ではなく、急務の国家安全保障課題となっている。現在、日本の食料自給率(カロリーベース)は約38%程度と先進国の中でも極めて低い水準だ。円安が続く今こそ、国内農業の再生と食料生産基盤の強化を本気で図るべき転換期ではないか。

「逆プラザ合意」だけでは不十分 本当の産業構造転換を

円安を「製造業復活のための戦略的誘導」と位置づけるだけでは、問題の根本解決にはならない。日本の経済を支えているのは、大手企業ではなく、99.7%を占める中小零細企業と、地域に根ざした農林水産業だ。彼らを置き去りにしたまま円安を進めれば、国内の産業基盤はむしろ弱体化しかねない。

今求められているのは、
・中小零細企業へのきめ細かな支援(コスト高への補助、価格転嫁支援、資金繰り対策)
・国内農業の抜本的強化と食料自給率向上に向けた国家プロジェクト
・サプライチェーンの国内回帰と多角化を本気で進める産業構造の見直し
円安という「痛み」をただ耐えるのではなく、それを産業構造転換のきっかけに変えることだ。

イラン・米の緊張が示したように、いつ何が起きても国民の生活と食料を自前で守れる国になる——それこそが、本当の意味での「強い日本」への道ではないだろうか。
この歴史的な円安局面を、単なる為替の話で終わらせず、中小零細企業と農家に寄り添い、食料自給と産業構造の根本改革を進める転換点にしなければならない。

タイトルとURLをコピーしました