AI株同時上場ラッシュとトランプ政権の「政府株取得」、経済評論家・朝倉慶氏の洞察から読み解く

社会
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「国家がAIを買い支える」時代が必然の流れとなっている。楽待で森永卓郎氏への敬意ある言及を交え、立ちっぱなしで1時間も解説された経済評論家の朝倉慶氏の洞察から読み解いていきたい。

今、市場で何が起きているのか?

2026年現在、SpaceX・OpenAI・Anthropicが相次いで大型IPOを計画・実行中だ。いずれも数千億〜数兆ドル規模の評価額を持ち、歴史上かつてない量のAI関連株が一気に市場へ供給されようとしている。

トランプ大統領は6月5日、エアフォースワン機内で記者団にこう語った。「アメリカ国民が企業のパートナーになるような概念を検討している」。OpenAIのサム・アルトマンCEOとの間では、政府がOpenAI株式を受け取り、その利益を国民に還元する「Public Wealth Fund(公共資産ファンド)」構想が1年以上にわたって協議されてきたとCNBCが確認している。

一見すると「AIブームの市場化+国民への利益還元」という話に見える。しかし、これは偶然出てきた話ではない。過去数十年の金融政策の歴史を知る者には、必然的な到達点として映るはずだ。

朝倉慶氏の指摘「政府は株価暴落を絶対に許さない」

経済評論家の朝倉慶氏は、自身の出演したYouTube動画(楽待チャンネルほか)で繰り返しこう語っている。「2008年のリーマンショック以降、政府と中央銀行は株価が下がるたびに即座に大規模金融緩和(QE)を行うようになった」と指摘している。そして、これがもはや構造として確立していると分析している。

なぜか?株価が暴落すれば、景気が悪化し、雇用が失われ、消費が冷え込む。政権の支持率は下がり、次の選挙で負ける。だから政治家は株を下げさせるわけにはいかない。下がりそうになれば即座にお金を刷り、市場に流し込む——これが現代の鉄則になったと朝倉氏は指摘している。

なお、話は脱線するが朝倉氏の動画では、過去の対談相手である故・森永卓郎氏の人柄や主張に対して敬意を表する場面があった。朝倉氏の人間性が垣間見えるというポジティブな投稿に気づいた方も多いと思う。

さて、結果として何が起きたか?現金はインフレで少しずつ目減りし、株・不動産・金といった実物資産が構造的に上がり続ける「金融インフレのループ」が常態化した。積極財政・円安・ETF購入、これらはすべてその延長線上にある。

朝倉氏の言葉を借りれば、「暴落は政府が許さない」——これが現代金融の現実だ。

なぜ政府は「直接株主」になろうとするのか?

ここでAI株上場ラッシュとトランプ政権の動きを重ねると、朝倉氏が指摘した「政府救済の構造」が、より積極的な形に進化していることが見えてくる。

AIには従来の経済危機にはない特有のリスクがある。急速な生産性向上による大量失業、そしてそれに伴う社会不安だ。工場の海外移転と違い、AIが引き起こす失業はホワイトカラーの中間層を直撃し、しかも不可逆的だ。クインニピアック大学の世論調査では、アメリカ人の55%が「AIは生活に害をもたらす」と答えている。

この不満が現実のものとなれば、単なる株価調整ではなく「AI冬の時代」によってAI産業の成長そのものが止まる事態を招く。これは従来型の金融緩和では防ぎようがない。お金をいくら刷っても、職を失った人々の怒りは収まらないからだ。

だからこそ、政府は「先手」を打とうとしている。AI企業の株を直接取得し、配当や値上がり益を国民に還元することで、国民を「AI株主」に変える。AIが成功すれば国民も得をする構図を作れば、反発は最小化され、不要な規制強化の動きも抑えられるからだ。

これはまさに朝倉氏が言う「政府が市場を救う」メカニズムの究極形だ。間接的な金融緩和から、直接的な所有と分配へ——AI恐慌(経済的・社会的な破局)を未然に防ぐ国家戦略として、一定の合理性を持っていると言えそうだ。

「新・金融インフレ体制」の完成形か?

朝倉氏の分析をさらに延長すれば、次の構造が見えてくる。

従来の危機対応はこうだった。株価暴落→金融緩和→株価回復→インフレ進行→現金目減り→資産保有者が得をする。

AI時代の対応はこうなる。AI失業リスク→政府がAI株主化→国民に直接還元→社会安定→さらなるAI投資加速→より大きな富創出とインフレ。

つまり「事後的な救済」から「事前的な取り込み」へ、政府の役割が進化している。リスクを感じた国民を「株主」にしてしまえば、その不満は内側から静まる。トランプ政権はすでに第2期政権でIntel・IBM・量子コンピューティング関連など数十社に直接出資しており、今回のAI構想はその延長にあるようにも見える。

朝倉氏が繰り返す「現金は溶け続ける」という指摘は、この流れの中でより鮮明になってくる。政府がAIに直接関与することで、AI関連資産には構造的な上昇圧力がかかり続ける局面が到来しうるからだ。

ただし、楽観だけでは危うい「三つの冷静な視点」

もっとも、「政府が買い支えるから安心」と単純に結論づけるのは早計だ。

一点目は利益相反の問題。政府がOpenAIの株主になれば、競合するAnthropicやMetaへの政策的中立性は保てるのか。実際、Anthropicはこの交渉に参加していないと関係者は明かしている。国家が特定のAI企業を優遇すれば、自由市場の公正性は損なわれる。

二点目はリスクの大衆移転だ。OpenAIの社員・元社員600名超がIPO前にセカンダリー市場で合計66億ドルをすでに売り抜けている。政府が「国民に還元する」と喧伝しながら、公開市場で株を買う一般投資家だけがリスクを丸ごと引き受ける構造になりかねない。

三点目は市場集中リスクだ。バンク・オブ・アメリカの試算では、SpaceX・OpenAI・Anthropicが上場すれば、米国株市場の集中度は現在の約40%から48〜50%超へ上昇し、ドットコムバブルや1920年代の株式ブームを超える歴史的水準に達するという。これはETFを通じた「強制買い」圧力を生み、既存の株式保有者にとっても無視できないリバランスリスクとなる。

個人はどう向き合うか?

超大型のAI株が同じようなタイミングで上場し、米国政府が株を取得しようとしていることは、単なる偶然かもしれない。しかし、金融政策史の必然的流れであるかも知れない。朝倉慶氏の洞察通り、政府は株価暴落(そしてAI恐慌)を許さないはずだからだ。

現金は溶け続け、AI関連資産には構造的な上昇圧力がかかる局面に入りつつある。しかし同時に、「政府が救う」という言葉の裏で、誰がリスクを負うのかを問い続けることが重要だ。国民を「AI株主」にするとは、AI企業のリスクを国民が引き受けることでもある。

国民還元を待つだけでなく、市場参加を通じて自衛する。その主体性こそが、この時代の生存戦略になるだろう。

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