小林製薬は12月26日、香港を拠点とする投資ファンド「オアシス・マネジメント」が同社の筆頭株主になったと発表した。経営の主導権を巡る創業家と投資ファンドの構図が大きく変化した。発表によると、12月22日時点でのオアシスの議決権ベースの株式保有比率は13.74%に達し、これまで筆頭株主であった創業家出身の小林章浩取締役の保有比率(約12%)を上回った。
対立の背景:紅こうじ問題とガバナンスへの不信
今回の筆頭株主の交代劇は、かねてくすぶっていた両者の対立が表面化したものだ。オアシスは、「紅こうじサプリメント」を巡る一連の健康被害問題への対応や、創業家による長年の経営支配体制を厳しく問題視してきた。実際に、過去の株主総会では経営陣の責任を追及する姿勢を明確にし、さらに小林氏ら当時の経営陣に対して損害賠償を求める株主代表訴訟を提起するなど、具体的な行動を起こしている。こうした根深い不信感を背景に、オアシスは経営への直接的な影響力行使へと踏み切った。
ファンドの戦略的行動:株式買い増しの意図を分析
オアシスは2025年12月18日時点の10.63%からわずか数日で3%以上を買い増しており、その動きは極めて迅速かつ戦略的だ。この行動が単なる純投資でないことは、関東財務局に提出された大量保有報告書からも明らかである。報告書に記載された保有目的は「重要提案行為など」とされており、経営に対して積極的に関与していく強い意志が示されている。
今後の展望:株主総会に向けた影響力の行使
オアシスによる一連の動きは、来年3月に開催が予定されている定時株主総会を見据えた布石である。筆頭株主としての立場を確保することで、株主提案や取締役の選任といった重要議案に対する影響力を最大化する狙いは明白だ。創業家と「物言う株主」の対立は一層先鋭化し、株主総会を舞台とした経営権を巡る攻防は必至の情勢だ。

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